メイキング ポピュラリティー
アーティストとメディア装置との共生をめぐって
800017 糸山博美
指導教官:葉柳 和則助教授
本稿の目的は、今日メディア装置により成立している人気現象のメカニズムを解明していくことにある。考察の素材としたのはJ-POPの人気アーティストである
第一章では、人気アーティストの明確な定義づけを試みる。そのうえで現代消費社会における人気という大衆現象の特徴をとらえ、さらに、人気現象の成立になくてはならないメディアについても言及する。その際、ヴァルダー・ベンヤミンの「複製技術」というテーマを参考にした。人気、メディア、J-POPのどれもが彼の議論の射程に入っていることは周知の事実であるからだ。。
続く第二章では、J-POPをバックから支えている録音機器やメディア装置にも目を配り、大衆とJ-POPがどのような関わり方をしているのかを明らかにする。第一章において現代における人気現象は一時的でかつ局所的であることを特質とすることが論証された。人気現象がなぜこのような特徴を持つのかを、メディア論をふまえたうえで考察し、それと同時にリスナーの音楽消費行動を分析することを試みた。
そして第三章では、アーティストに対するリスナーの心理について、筆者自身がてがけたアンケートやインタビュー調査結果を題材にして考察する。人気アーティストに対する大衆の一般的見解や、ファンの行動を分析することで、第二章で論じた大衆とメディア装置とJ-POPとの有機的な関係を実証する。特に、第二章で明らかになった、メディアが大衆のリアリティを曖昧に感じさせている問題に関しては、重点的に論じている。。
メディア装置によってリアリティが曖昧になった分だけ、大衆とアーティストとの距離が近くなったように思えるし、まるで相手とのコミュニケーションが成立しているような錯覚さえも起きる。だが、あくまでそれは虚構であり、単なるメディアとの接触に過ぎない。メディア装置をふまえたわれわれの聴取の態度とは、自由であると同時に閉塞的であるということを念頭におかなければならないだろう。
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