現代の都市空間における聖と俗

−カラオケを事例にして−

800041 北島有佳子

指導教官:葉柳 和則助教授

 本稿の目的は、日本におけるカラオケ普及要因を探索することである。そのために、今回はカラオケボックスの空間性、及び日本人の宗教面における特質に注目することにした。これまでの先行研究のうち、この二点に詳しく触れているものはない

 まず第1章では、カラオケの歴史を確認した上で、カラオケの特徴を具体的に割り出していった。カラオケの特徴については、丸山圭三郎が何点か取り上げていたが、異論の余地が存在することも確かである。そこで、インタビューを行ない、さらには他の「歌う行為」と比較して、先行研究では不十分であったカラオケの特徴を分析し直した。その結果、カラオケが普及した背景には、86年に誕生したカラオケボックスの「個室性」が絡んでいるのではないかという仮説が生まれた。

 第2章では、この仮説を検証するため、アンケート結果に基づく数的データを分析した。データからは、カラオケボックスという「個室」から生まれる非日常的コミュニケーションがカラオケ普及をもたらしていることを示すことができた。さらに、この「非日常的空間性」を、文化人類学・宗教学の視点から解釈し、カラオケボックスが俗なる都市社会にある「聖なる空間」であると共に、コスモスとカオスが出会う、特殊な性質を帯びていることを明らかにした。

 第3章は、日本人特有の聖俗観念に焦点を当て、改めて「日本人がカラオケを受け入れたのは何故か」を考察した。世俗化した現代社会で生きる日本人の信仰心は、確実に希薄化している。だが、抑圧からの逃避など理由に「神聖なものとの関わり」を求める願望があるのは確かだ。また、現代日本人は、過去ほど地縁・血縁を重んじてはおらず、むしろ友人とのコミュニケーションを大切にする傾向にある。

 以上の結果から、カラオケは、個室のカラオケボックスが特殊な「非日常的空間」をもたらし、日本人における聖俗観念やコミュニケーション形態の変容に見事に対応したことで、大普及を遂げたという答えを出すことができた。


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